この記事の3行サマリー

  • バリュー(行動指針)は、ミッションやビジョンから考え始めるより、「理想の人物像」と「全社の課題」を素材にして作るほうが、現場の実感に合います
  • 手順は、素材出し、AIでたたき台づくり、人間の議論で決定の3ステップです
  • 決めるときは「記憶に残るか」「判断基準になるか」「ワクワクするか」の3つで見ます

「バリューを作りたいが、どこから手をつければいいかわからない」——多くの経営者が直面するこの課題に、実践的なアプローチを紹介します。

バリュー(行動指針)とは

バリューとは、会社が大切にする価値観や、社員に求める行動の基準のことです。ミッション(使命)、ビジョン(目指す姿)とあわせて、MVVと呼ばれます。ミッションとビジョンが「何のために」「どこへ向かうか」を示すのに対し、バリューは「日々の判断や行動で何を大事にするか」を示します。

バリューが社員の判断基準として働くには、現場の言葉で書かれていて、迷ったときに思い出せることが大切です。

上流から考える方法が、うまくいきにくい理由

ミッション→ビジョン→バリューと上流から順に考える従来の方法は、抽象度が高くなりがちです。立派な言葉が並んでも、現場の実態と離れてしまい、「飾りの言葉」になるおそれがあります。

そこで効果的なのが、現在の課題と理想を結ぶ3ステップ です。

手順1:素材を出す

「理想の人物像(ポジティブ)」と「全社の課題(ネガティブ)」を、キーワードで書き出します。「変化を楽しめる、愛嬌がある」「言われたことしかやらない、失敗を隠そうとする」といった、愚痴や願望のレベルで構いません。きれいな言葉にする必要はありません。

素材は次のように2列に並べると整理しやすくなります。

理想の人物像(ポジティブ) 全社の課題(ネガティブ)
変化を楽しめる 前例のないことを避ける
失敗を共有して、次に生かせる 失敗を隠そうとする
自分から声をかけられる 言われたことしかやらない

手順2:AIでたたき台をつくる

素材をもとに、AIに「課題を解決し、理想に近づくための行動指針案」を10個ほど出してもらいます。たとえば、次のように頼みます。

次の「理想の人物像」と「全社の課題」をもとに、課題を解決して理想に近づくための行動指針の案を10個出してください。
1つは20字以内の短い言葉にして、「〜しよう」という形でそろえてください。

理想の人物像:変化を楽しめる、失敗を共有して次に生かせる、自分から声をかけられる
全社の課題:前例のないことを避ける、失敗を隠そうとする、言われたことしかやらない

AIが出すのは、あくまでたたき台です。そのまま採用せず、次のステップで人が選び、言い換えます。

手順3:人間の議論で最終決定する

AIのたたき台を全員で議論し、次の3つの基準で最終決定します。

基準 確かめること
記憶に残るか 短く、口にしやすい言葉か
判断基準になるか 迷ったときに「これに照らすとどうか」と使えるか
ワクワクするか 社員が自分たちのものとして誇れるか

社員の議論を経て決めることで、「やらされるバリュー」ではなく、自分ごととして受け止められるバリューになります。

作ったバリューを評価につなげる

バリューは、決めただけでは浸透しません。評価の項目に入れて、日々の行動で確認できるようにします。バリューを評価に使う方法は、成果だけじゃないバリュー評価の極意で解説しています。

よくある質問

Q. AIを使わずに作ることはできますか? A. できます。AIは、素材から案を出す時間を短くするための道具です。素材出しと議論は、人が行います。

Q. バリューはいくつ作ればよいですか? A. 決まった数はありません。ただ、多すぎると覚えられません。社員が口にして思い出せる数まで絞りましょう。

Q. すでにミッションやビジョンがあります。それでもこの方法は使えますか? A. 使えます。ミッションやビジョンを土台に、現場の課題と理想から行動指針を作ると、抽象的な言葉が日々の行動に結びつきます。

まとめ

この方法で生まれたバリューは現場の実感に根ざしており、腹落ち感が高くなります。 バリュー策定の機会があれば、ぜひこの手順を試してみてください。